開店祝いに胡蝶蘭を注文して、最後に手が止まるのが立て札です。
花屋でフリーターをしているあおいです。
店頭で「これ、なんて書けばいいんですか」と聞かれる回数が、いちばん多いのがこの立て札でした。
社名の書き方ひとつで相手の受ける印象が変わるので、迷って当然だと思います。
ただ、書く要素は3つしかありません。
基本の書き方とシーン別の文例、現場でよく見かける書き間違い、それから注文のときに花屋へ伝えておくことまでまとめます。
目次
立て札は「誰が贈ったか」を伝えるための名札
開店祝いの現場では、花より先に立て札が読まれる
配達で開店前のお店に入ると、白い胡蝶蘭が10鉢近く並んでいることがあります。
どれも3本立ちの大輪なので、花だけ見ても正直まったく見分けがつきません。
そこでお店の方が何をするかというと、一鉢ずつかがみ込んで立て札の名前を控えていきます。
立て札は飾りではなく、贈り主の名刺そのものです。
ここが空欄だと、お礼を伝えたくても連絡先すら分からないまま、花だけが残ります。
胡蝶蘭のような鉢物は、家庭で楽しむためより贈り物として選ばれることが多い花です。
農林水産省の花き流通・消費動向調査でも、鉢もの類が誰にどれだけ売られているかが調査項目として扱われています。
木札と紙札、どちらを選ぶか
立て札には木の板に書く木札と、厚紙に書く紙札があります。
違いをざっくり並べると、こうなります。
| 木札 | 紙札 | |
|---|---|---|
| 印象 | 格式があり、法人向き | 気軽で親しみやすい |
| 料金 | 別料金のことが多い | 無料のことが多い |
| 向くシーン | 開店祝い、就任祝い、取引先へ | 友人や家族の開業祝いなど |
| 弱点 | 屋外では雨や日焼けで傷む | 湿気でふやけ、文字がにじむ |
サイズはお店によって差がありますが、木札はおよそ24×9センチ、紙札は20×10センチくらいが目安です。
取引先やあまり親しくない相手なら、迷わず木札で構いません。
私が接客していて「どちらがいいですか」と聞かれたときも、法人あてなら木札をおすすめしています。
メッセージカードとの使い分け
立て札とメッセージカードは、役割がまったく違います。
立て札は誰から届いたかを外に向けて知らせるもので、来店したお客様の目にも入ります。
一方のカードは、受け取った本人だけが読むものです。
だから「ご開業おめでとうございます。お体に気をつけて」といった言葉は、立て札ではなくカードに書きます。
立て札に長い文章を入れると、文字が小さくなって遠くから読めません。
両方つけたいときは、花屋に頼めばたいてい対応してもらえます。
立て札に書くのは3つの要素だけ
頭書きはお祝いの内容を一言で
頭書きは、立て札のいちばん目立つ場所に入るお祝いの言葉です。
慶事では赤い文字で書くのが基本になっています。
「祝御開店」「祝御就任」のように、何のお祝いかが一目で伝わる言葉を選びます。
どれにするか決めきれないときは、「御祝」の二文字で問題ありません。
シーンを限定しないぶん、相手の状況を取り違える心配がないからです。
実際、事情がよく分からないまま急いで手配される法人のお客様には、この二文字をおすすめすることが多いです。
贈り主名は、略さず正式名称で
贈り主名は必ず入れます。
法人なら会社名に加えて、役職と氏名まで書くのが一般的です。
「株式会社〇〇 代表取締役 山田太郎」という形ですね。
会社名を略すのは避けてください。
社内では通じる略称でも、贈られた側には別の会社に見えることがあります。
宛名(贈り先名)は入れても入れなくてもいい
宛名は必須ではありません。
胡蝶蘭がたくさん並ぶ開店祝いでは、入れておくと相手が整理しやすくなります。
反対に、贈り主だけをすっきり見せたいときは省いても失礼にはあたりません。
判断に迷ったら、その胡蝶蘭が人目に触れる場所に置かれるかどうかで決めてください。
店舗の入口やロビーに並ぶなら、宛名があったほうが受け取った側は管理しやすくなります。
社長室のように限られた人しか入らない場所なら、宛名はなくても困りません。
入れる場合は、こんな書き方になります。
- 会社あて:〇〇株式会社 御中
- 個人あて:〇〇 〇〇 様
- 役職を添える:〇〇株式会社 代表取締役 〇〇 〇〇 様
縦書きにするか、横書きにするか
縦書きが基本ですが、決まりというほど固いものではありません。
社名にアルファベットが入るなら、横書きのほうがはるかに読みやすくなります。
「Smith & Co.」を縦に流すと、一文字ずつ寝てしまって読みづらいためです。
並び順は、縦書きなら右から宛名、頭書き、贈り主名。
横書きなら上から同じ順に置くのが一般的です。
ただしレイアウトは花屋ごとに少し違うので、気になるときは仕上がりの見本を見せてもらうと確実です。
シーン別・頭書きと文例
開店・開業・移転のとき
まず頭書きを、場面ごとに整理します。
| シーン | 頭書きの例 |
|---|---|
| 開店・開業 | 祝御開店/祝御開業/開店御祝 |
| クリニックの開院 | 祝御開院/開院御祝 |
| 事務所や店舗の移転 | 祝御移転/移転御祝 |
| 就任・昇進 | 祝御就任/祝御昇進 |
| 周年 | 祝創立十周年/祝五周年 |
| 上場 | 祝御上場 |
| お供え | 供/御供/供花 |
開店祝いの立て札は、次のように収まります。
祝御開店
株式会社〇〇
代表取締役 〇〇 〇〇
宛名まで入れるなら、頭書きの前に「カフェ〇〇 御中」を加えます。
移転祝いも構造は同じで、頭書きを「祝御移転」に差し替えるだけです。
就任・昇進・周年のとき
就任祝いでは、贈り先の役職と氏名まで入れる形がよく使われます。
社長就任のように社内外に披露される場面では、誰へのお祝いかがはっきりするからです。
祝御就任
〇〇株式会社
代表取締役社長 〇〇 〇〇 様
株式会社△△ 代表取締役 △△ △△
周年祝いの数字は、漢数字で書くのが通例です。
「祝十周年」のほうが、木札の縦書きになじみます。
お供えの胡蝶蘭を贈るとき
白い胡蝶蘭は、お供えとしても選ばれます。
このとき立て札は、お祝いとは書き方が変わります。
- 頭書きは「供」「御供」「供花」のいずれかにする
- 赤文字は使わず、薄墨で書く
- 宛名は入れず、贈り主名だけを記す
亡くなった方のお名前を立て札に書くことはしません。
また、地域や宗派によって作法が違うので、斎場や葬儀社に確認してから注文すると安心です。
花屋に「弔事用です」と一言伝えれば、ラッピングも含めて弔事の仕様にしてもらえます。
花屋の現場でよく起きる、立て札の書き間違い
前株と後株の取り違え
いちばん多いのがこれです。
「株式会社〇〇」と「〇〇株式会社」は別物なので、間違えると受け取った側にはすぐ分かります。
注文前に、相手の会社の公式サイトか名刺で表記を確かめてください。
同じ理由で、旧字体にも注意がいります。
「髙」「𠮷」「濵」あたりは、変換で普通の字に置き換わりがちです。
連名は3〜4名までにする
複数人で贈るとき、名前は3〜4名までが目安です。
それ以上入れると文字が小さくなり、離れた場所からは読めなくなります。
人数が多いときは、こうまとめます。
- 〇〇株式会社 営業部一同
- 〇〇株式会社 〇〇支店一同
- 代表者名を書き、その左に「他一同」を添える
順番は役職の高い人から書きます。
社外の人と連名にする場合は、先方を先に置くのが無難です。
文字を詰め込みすぎる
立て札の面積は決まっています。
役職も部署も肩書きも全部入れようとすると、一文字が数ミリになって用をなしません。
情報を足すほど伝わるわけではない、というのは現場で何度も見てきました。
入れるかどうか迷ったら、贈り主の会社名と氏名を優先してください。
部署名は、社名だけでは誰か分からないときに足せば十分です。
注文のとき、花屋に伝えておくとよいこと
立て札の内容は注文と同時に伝える
立て札は、注文が入ってから一枚ずつ手書きしたり印刷したりします。
当日配送だと締め切りが早く、朝のうちに内容が確定していないと間に合わないこともあります。
配達日の指定より先に、立て札の文面を決めておくほうが結果的にスムーズです。
社内で承認が必要な場合は、そのぶん逆算して動いてください。
急ぎで手配して困りやすいのが、書き直しです。
木札は一枚ずつ書くので、届ける当日に「役職が変わっていた」と分かっても、その場では直せません。
配達前なら差し替えできる花屋がほとんどなので、間違いに気づいた時点ですぐ連絡してください。
電話より、メールやフォームで伝える
電話で伝えると、聞き間違いが起こります。
「サイトウ」だけでも斎藤、齋藤、斉藤、齊藤と候補が並びます。
- 会社名、役職、氏名を書いた文字データで送る
- 旧字体は「はしごだか」のように補足をつける
- アルファベットの大文字小文字まで指定する
このあたりを最初にまとめて渡しておくと、確認のやり取りが一往復で終わります。
会社の経費で贈るとき
法人が取引先に贈る胡蝶蘭は、交際費として処理されるのが一般的です。
国税庁のNo.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算では、交際費等を、取引先など事業に関係のある人への接待や贈答などのために支出する費用と説明しています。
領収書の宛名や但し書きをどうするかは、注文時に伝えておけばその通りに用意できます。
実際の勘定科目の判断は会社ごとに違うので、経理担当者や顧問税理士に確認してください。
まとめ
立て札に書くのは、頭書きと贈り主名、それに必要なら宛名。
この3つだけです。
慶事なら赤文字で「祝御開店」、弔事なら薄墨で「供」に切り替えます。
会社名は略さず、連名は3〜4名まで。
覚えておくことは、そのくらいです。
胡蝶蘭は届いてから2か月ほど咲き続けます。
その間ずっと、立て札はお店の入口で贈り主の名前を伝え続けます。
だからこそ、注文の最後に少しだけ時間をかける価値があります。
書き方に迷ったら、花屋に聞いてください。
私たちは毎日その文字を書いているので、たぶん相談相手としては悪くないはずです。