花屋フリーターが正直に言う〜胡蝶蘭って実はこんな花です

こんにちは。花屋でフリーターをしているあおいです。開店祝いや就任祝いの季節になると、毎日のように胡蝶蘭を店頭に並べ、お客様の元へ運ぶ日々を送っています。花屋で働いていると、「胡蝶蘭って高いですよね」「贈ってもらったけど育てるのが難しくて……」という声をよく耳にします。華やかなイメージが先行している胡蝶蘭ですが、正直なところ、業界の中の人間から見ると「そうじゃないんだよな」と思う部分も多いんです。

この記事では、花屋フリーターとして日々胡蝶蘭と向き合っている私が、メリットもデメリットも包み隠さずお伝えしていきます。贈る前に知っておいてほしいこと、もらってから困らないためのヒントなど、できるだけ正直に書きました。ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

胡蝶蘭って、そもそもどんな花なの?

胡蝶蘭(コチョウラン)は、台湾・フィリピン・マレーシアなど東南アジアを原産とするラン科の着生植物です。「着生植物」というのは、土の中ではなく岩や木の幹にくっついて生きる植物のこと。自然界では熱帯雨林の木陰から差し込む光を栄養に、空気中の水分を根から取り込んで育っています。

花屋に並ぶ鉢植えの姿からは想像しにくいかもしれませんが、本来の胡蝶蘭は空中に根をのばして生きているんです。この生態を知っておくと、なぜ土ではなく水苔や木片(バークチップ)が鉢の中に入っているのかが納得できます。

学名は「Phalaenopsis(ファレノプシス)」で、ギリシャ語で「蛾のような」という意味。英語でも「Moth Orchid(蛾の蘭)」と呼ばれています。日本では花の形が「蝶が舞っているよう」に見えることから「胡蝶蘭」と名付けられましたが、西洋では「蛾」と捉えられていたというのは、文化の違いが面白いなと思うポイントです。

大輪とミディ、ふたつのタイプがある

花屋に並ぶ胡蝶蘭は、大きく2種類に分かれます。

  • 大輪胡蝶蘭:花径が10〜15cmほどの大きなタイプ。開店祝いや就任祝いに贈られることが多く、価格は3本立ちで1万5000円〜3万円程度
  • ミディ胡蝶蘭:花径が6〜9cmほどのコンパクトなタイプ。色や模様が豊富で、個人への贈り物にも向いている。3本立ちで8000円〜1万5000円程度

贈り物の定番になっているのは白い大輪ですが、実はミディのほうが色のバリエーションが豊富で、ピンク・黄色・紫・オレンジなどカラフルな品種がたくさんあります。「胡蝶蘭=白」というイメージで固まっている方は、ミディ系もぜひ覗いてみてください。

花屋の立場から見た「胡蝶蘭の本当の魅力」

花もちが本当に長い

胡蝶蘭の最大の魅力は、圧倒的な花もちの良さです。適切な環境に置けば、1か月から3か月近く花を楽しめます。これは一般的な切り花(1〜2週間程度)と比べると圧倒的な差があります。

開店祝いに胡蝶蘭が選ばれる理由のひとつがここにあります。オープンから忙しい時期でも、水やりをあまり頻繁にしなくても(基本は7〜10日に1回で十分)、きれいな状態を保ってくれる。贈られた側の負担が少なくて済むんです。

香りがない、花粉が飛ばない

これも実際に働いていて実感する強みです。胡蝶蘭はほぼ無香で、花粉も花びらの奥に固まっているため外に飛び出しません。飲食店の開店祝いに贈っても料理の邪魔にならないし、花粉症の方がいる職場に置いても安心です。お見舞いで花を持っていけない病院は多いですが、花粉が出ない胡蝶蘭であれば受け入れてもらいやすいケースもあります。

うまく育てれば「二度咲き」する

花が終わった後も、適切にお手入れをすれば翌年以降にまた花を咲かせてくれます。花が2〜3輪残っている状態で下から4〜5節目を切り、そこから新しい花芽を出させる方法です。株自体の寿命はとても長く、病気や根腐れなどがなければ50年以上生きるとも言われています。一度いただいたものを長く手元に置けるのは、鉢植えならではの魅力ですね。

正直に言います——胡蝶蘭の「困る面」

さて、ここからが花屋フリーターとして正直に言いたいところです。胡蝶蘭はメリットだけではありません。受け取った側が困る場面も少なくないんです。

サイズが大きくて置き場所に困る

大輪3本立ちの胡蝶蘭は、高さが70〜100cmほどになります。お店のオープン時に複数の取引先から一度に届いた場合は、文字通り置く場所がなくて困る、という声をよく聞きます。スペースが限られた個人宅に大輪の胡蝶蘭を贈るのは、正直なところ相手の迷惑になるケースもあります。

処分に困る

花が終わったあと、胡蝶蘭の処分は意外と手間がかかります。ワイヤーや支柱を外して、土(水苔)を取り除いて、鉢を分別して……という作業が必要です。大きな鉢の場合は粗大ごみとして有料になることもあり、「処分が大変だった」という声はよく聞きます。

「迷惑に思う人」もいる

これは正直に言わないといけないことなのですが、胡蝶蘭を受け取って困る方もいます。特に植物の管理に慣れていない方、忙しくてお世話できない方、スペースが確保できない方にとっては、プレッシャーになることも。贈る相手の状況をある程度把握してから選ぶことが大切です。

こうした「胡蝶蘭を贈られた側の本音」については、胡蝶蘭は迷惑?もらった人の本音・口コミと贈る際のマナーを解説でも詳しく紹介されているので、贈る前にぜひ参考にしてみてください。

なぜ胡蝶蘭はこんなに高いの?

花屋で働いていると、お客様から「どうしてこんなに高いの?」と聞かれることがよくあります。これには明確な理由があります。

まず、苗ができるまでに2年以上かかります。胡蝶蘭の育成では「メリクロン栽培」というクローン技術が使われており、親株から細胞を採取してフラスコ内で培養します。この技術には専門設備が必要で、さらに台湾などからの輸入コストも上乗せされます。

苗から開花・出荷できる状態になるまでには合計4年以上の歳月が必要です。その間ずっと、20〜28℃に保たれた温室で温度・湿度・日光が管理されます。光熱費も人件費も相当なもので、これが価格に反映されています。

立数用途の目安価格相場
1本立ち個人へのプレゼント8,000〜15,000円
3本立ち一般的な取引先への開業祝いなど15,000〜30,000円
5本立ち重要な取引先・大規模なお祝い30,000〜50,000円
7本立ち以上特別な相手・大型施設50,000円〜

また、価格は時期によって変わります。年度の切り替えが集中する3月中旬〜4月上旬は需要が一気に高まるため値段が上がります。一方、5月〜7月下旬や10月〜2月頃は比較的手ごろに買えることが多いです。

胡蝶蘭を長持ちさせるために、知っておきたいこと

受け取った胡蝶蘭をできるだけ長く楽しむために、覚えておいてほしいポイントがあります。

置き場所がもっとも重要

胡蝶蘭にとって理想の環境は「明るいけど直射日光が当たらない、風通しの良い場所」です。レースのカーテン越しの窓辺がベストです。開店祝いでよくあるのが、お店の玄関先や外に置いてしまうケースですが、直射日光・エアコンの風・外気の温度変化はすべて胡蝶蘭の大敵です。

温度は最低でも10℃以上、理想は20〜25℃。人間が快適に感じる室温なら、胡蝶蘭も元気でいられます。

水のやりすぎに注意

「植物=毎日水やり」というイメージがありますが、胡蝶蘭は乾燥に強い植物です。基本の水やりは7〜10日に1回。水苔やバークチップを触って、乾いていたらあげる、という感じでOKです。むしろ水のやりすぎが根腐れの原因になるので、少なめを意識してください。

花粉塊には触れない

胡蝶蘭の花の奥には「花粉塊」というかたまりがあります。これが何らかの理由で外れてしまうと、植物が「受粉完了」と判断して5日ほどで花が枯れてしまいます。花を長持ちさせたいなら、花粉塊には絶対に触れないようにしてください。

胡蝶蘭の花言葉と贈り物のマナー

胡蝶蘭の花言葉は「幸福が飛んでくる」「純粋な愛」です。蝶が飛んでくるイメージから、縁起の良い花言葉が生まれました。お祝いの贈り物にこれ以上ない言葉ですね。

色によっても花言葉は異なります。

  • 白:清潔・純粋・品格
  • ピンク:あなたを愛する・幸福
  • 黄色:商売繁盛・幸運が訪れる
  • 赤・濃いピンク:情熱・活力

ただし、開店祝いで「赤」の胡蝶蘭は避けるのがマナーです。赤は「赤字」や「火事」を連想させるとされているため、ビジネスシーンでは好まれません。贈る相手のお店にテーマカラーがある場合は、それに合わせた色を選ぶと喜ばれます。

また、胡蝶蘭を贈る際の立て札には「御開店御祝」「祝 御開業」などと書くのが一般的です。胡蝶蘭は偶数本よりも奇数本(1本・3本・5本)を選ぶほうが縁起が良いとされています。

まとめ

胡蝶蘭は「長く咲き続ける」「香りがない」「花粉が飛ばない」という特徴を持つ、贈り物に適した花です。ただ、大きくて場所を取ること、処分が手間なこと、育て方に慣れが必要なこと——こうした正直なところも知っておいてほしいのが花屋フリーターとしての本音です。

贈る相手の状況や好みを少し想像するだけで、胡蝶蘭はもっと喜ばれる贈り物になります。反対に、自分用に小ぶりのミディ胡蝶蘭を育ててみると、意外と楽しいですよ。「難しそう」というイメージが払拭されれば嬉しいです。

胡蝶蘭の「良い面」も「困る面」も、ぜんぶ知ったうえで選んでもらえるのが、花屋フリーターとして一番嬉しいことです。